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平成20年度 第6回
視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜in東京
(平成21年2月7日開催)

 

<会 合 の 概 要>

 平成20年度「経営委員会による意見聴取」の第6回目は、千代田放送会館ホールスタジオで実施した。経営委員長と3人の経営委員および会長と3人の理事が出席し、「放送」「経営など全般」の2つのテーマで、公募による参加者52名の視聴者からご意見を伺った。

 

<会 合 の 名 称>

視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜in東京

 

<会 合 日 時>

平成21年2月7日(土) 午後2時00分から午後4時30分まで

 

<出  席  者>

 〔経営委員〕

 

委員長 小丸成洋、委員長職務代行者 岩崎芳史
委員 井原理代、小林英明

 〔執 行 部〕

会長 福地茂雄、専務理事 金田  新

 

理事 大西典良、今井 環

 〔視 聴 者〕

公募による視聴者52名

 〔司  会〕

末田正雄アナウンサー

 

< 場   所 >

 千代田放送会館 2階ホールスタジオ

 

< 開 催 項 目 >

 以下の通り進行した。終了後、大河ドラマ「天地人」を制作している制作局ドラマ番組部の内藤チーフプロデューサーによるトークショーを開催した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの放送について

 (2) NHKの経営など全般について

4 閉会あいさつ

 

<概要・反響・評価>

  • はがき・ホームページで受け付ける公募の結果、計84名の参加申し込みがあった。抽選による数の絞り込みも検討したが、会場の収容力の範囲内であることや、できるだけ多くの視聴者の方々にご来場いただきたいという判断から全員に案内を送付することにした。その際、参加者の意見の把握と参加意思の確認のために事前アンケート調査を実施したところ、69名から回答・返送があり、59名が参加すると答えていた。当日は、52名が来場・参加した。

  • 全員が発言する時間がなかったため、当日も意向収集のアンケート調査を行い、52名中45名(87%)から回答があった。回答者の年齢層は、20歳代1名、30歳代4名、40歳代4名、50歳代6名、60歳代11名、70歳以上19名で、各年代層から参加を得た。
    参加者の満足度については、「たいへん満足」あるいは「満足」と答えた人が43%、「ふつう」と答えた人が16%、「不満」あるいは「たいへん不満」と答えた人は41%であった。

  • 会合は、「放送」と「経営など全般」の2つのテーマに沿って、末田正雄アナウンサーの司会でスムーズに進行した。最初から参加者の発言を求める挙手が絶えず、予定の2時間を超過する充実した内容となった。
    ニュースの内容、視聴者対応、ETV2001問題、国会中継、教育テレビ、受信料制度、経営委員会の議事録についてなど幅広く示唆に富む意見・提言が多数寄せられた。
    最後に小丸経営委員長が、「次期経営計画を執行部が着実に実施していくようしっかりと監督していくことが課題である。執行部と適度な緊張感を保ちながら、お互いの権限を尊重し、計画の達成に向けて努力していきたい。」と述べて会合を締めくくった。

 

 

< 開 催 内 容 >

《経営委員長あいさつ》

(小丸経営委員長)

  福山通運株式会社の社長をしております小丸です。平成16年6月に、中国地方の代表として経営委員に任命され、昨年の12月に委員長に選ばれました。
 NHKは、いま重要な時期を迎えておりますので、その重責を痛感していますが、いったんお引き受けした以上、一生懸命頑張っていきたいと思っています。本日は皆さまの貴重なご意見をお聞きし、今後の経営委員会の議論に反映させていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 

《会長あいさつ》

(福地会長)

  昨年の1月からNHK会長を拝命しております福地です。それまで51年間、アサヒビールに勤めていました。就任した際に73歳でしたので、人生で最後の最大の仕事として取り組みます、とNHKの職員に対してあいさつをしました。4月から新しい経営計画がスタートします。「いつでも、どこでも、もっと身近なNHK」ということを目指して、執行部一同まい進してまいります。

 

(岩崎委員長職務代行者)

 ◆協会の基本方針・重要事項を説明

  • 経営委員会の役割は、NHKの経営方針を議決することと、NHK執行部の職務の執行を監督することです。また、経営委員の中から監査委員が任命され、監査委員会は執行部の職務執行を監査します。このように、改正放送法では、経営委員会の機能・権限が一層明確化されました。
  • その権限を正しく行使するために、視聴者の皆さまのご意見を直接伺う「意見聴取」を行うことも定められました。視聴者の皆さまのご意見を伺って、経営委員会の運営に生かしていきたいと思います。
  • 昨年10月14日の経営委員会で、平成21年度からの3か年経営計画が議決されました。
    • 2011年7月24日に国の政策で地上波テレビ放送はすべてデジタル化されます。また、放送と通信の垣根が低くなるなど、メディア環境は大きく変化します。NHKはこうした変化に対応して、公共放送としての役割を果たしていくため、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」をスローガンとして掲げ、2つの経営目標を立てました。
      その1つ目は、NHKへの接触者率を3年後に80%にすることです。
      2つ目は、19年度末の受信料支払い率71%を3年後に75%、5年後に78%とすることです。
      この経営目標の実現のために具体的な9つの経営方針を立てました。
    • 方針1。視聴者の皆さまの信頼を高めるため、組織風土改革に全力を挙げます。相次ぐ不祥事の反省を踏まえ、組織や人事、職員の意識改革を徹底して進め、コンプライアンスの精神を組織のすみずみまで浸透させたいと考えています。
    • 方針2。日本の課題、地球規模の課題に真正面から向き合います。報道、ジャーナリズムを強化し、NHKの取材・制作力と豊富な映像を最大限に生かした、質の高い番組をお届けします。また衛星放送は現在の3波を高画質・高音質のハイビジョン2波に再編することを検討しています。
    • 方針3。放送・通信融合時代の新サービスで公共放送の役割を果たします。昨年12月からは、NHKオンデマンドサービスが始まりました。
    • 方針4。地域を元気にするための拠点となります。放送局が地域の皆さまをつなげる場となり、積極的な交流、地域再生のための拠点の役割を果たしていこうという取り組みです。
    • 方針5。日本を、そしてアジアを世界に伝えます。外国人向けの英語による24時間のテレビ国際放送を今年の2月2日から始めました。日本の課題や政策、伝統文化や美しい自然風土など、日本とアジアの今を広く世界に伝えていきます。
    • 方針6。円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます。デジタル化に向けて放送局の設備や電波を中継する中継局の整備などを、これからも着実に進めます。
    • 方針7。構造改革を推し進め、効率的な体制で受信料の価値をより大きくします。限りある経営資源を放送の取材・制作現場にシフトして放送サービスの充実に努め、視聴者の皆さまからいただく受信料の価値を高めていきたいと考えています。
    • 方針8。受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します。受信料を公平に負担していただくための取り組みを進めて、支払い率を高めていきます。また営業にかかる経費を抑制していく取り組みも進めます。
    • 方針9。環境経営に着実に取り組みます。
    • 受信料については、完全デジタル化への移行を見定め、受信料の公平負担への取り組みを徹底し、構造改革を進めることで収支差金を生み出す努力を続け、平成24年度から受信料収入の10%の還元を実行します。
  • 平成21年度の収支予算・事業計画について
    • 平成21年度事業収入は6,699億円です。そのうち受信料収入は6,490億円、20年度予算に対して140億円増を見込んでいます。事業支出は6,728億円です。地上テレビ放送の完全デジタル化のための追加経費などの影響により、収入から支出を差し引いた事業収支差金は29億円不足の赤字予算となります。地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた設備の整備や、放送会館などの整備のための建設費は802億円です。
    • 21年度末の受信料支払い率は20年度見込み71.5%から0.7ポイントアップの72.2%を目指します。
    • 地上テレビ放送の完全デジタル化に向けた取り組みとして、中継局の建設や、放送局内のデジタル化対応などに重点投資を行うとともに、デジタル難視聴対策など、国や民放などと連携した受信環境整備に取り組み、山間地など地上デジタル放送の難視聴地域における共同受信施設などへの経費助成など、532億円を予算に計上しています。
    • 21年度は、冬季オリンピック、スペシャルドラマ「坂の上の雲」のほか、地域防災・福祉などの問題について視聴者の皆さまとともに考え、ともにつくる番組やイベントに取り組みます。
    • テレビ、パソコン、携帯端末など自ら選んだメディアで、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」に接触していただく確かな情報や魅力的なコンテンツをお届けする3-Screensの展開を進めていきます。
    • 国際放送による情報発信の強化として、英語によるニュースを24時間、毎正時に放送するとともに、海外の受信環境を整備して、21年度末までに世界の1億2,500万世帯でNHKの国際放送が受信可能となるよう取り組みを進めます。
    • 視聴者の皆さまの信頼回復への取り組みとして、視聴者の皆さまとの「ふれあいミーティング」やコールセンターなどに寄せられる皆さまの声を経営に反映させる回路をさらに充実します。
    • NHKの事業支出のうち国内放送番組の制作と送出に事業支出全体の72.9%をあてています。
  •  21年度は3か年計画の初年度としてたいへん重要な年ですので、経営委員会としても執行部とともにそれぞれの役割を全力で果たしていきたいと考えています。

 

 

《視聴者の皆さまからのご意見とNHK側からの回答》

 

第1のテーマ:「放送」について

【会場参加者】
 1つ、内閣支持率報道による世論操作はやめていただきたい。これは政党支持率なども同様です。
 2つ目は、覚せい剤・麻薬摘発について、時価何億相当の何々が摘発されたというニュースをよく聞きます。このニュースを聞き続けていると、売人募集の宣伝に聞こえてきますので、時価の報道はやめていただきたい。
 3点目、大リーグ放送をNHKが行う必要はあるのでしょうか。放送権を得る代わりに、失ったものが大きいのではないかと思います。大リーグ放映権は返還し、民間に任せ、失ったものを回復していただきたいと思います。

【会場参加者】
 第1点目は、ニュース番組における各項目の時間配分と順序についてです。私は7時のニュースを家にいるかぎり見ていますが、昨年9月のNHKの自民党総裁選報道については政府寄りの報道がなされていなかったかという疑問が拭えません。最近では、力士による大麻事件のニュースがトップで長々と報道されて、国会の質疑の模様がスポーツ枠の直前に短い時間で流されたというようなことも目にしました。視聴率を競う民放の番組ではないのですから、視聴率優先という発想を変えてほしいと思います。
 第2点目は、視聴者対応についてです。NHKは月間の視聴者対応報告と年間の視聴者サービス報告書をホームページで公開していますが、視聴者の意見のいいとこ取りをして、非常に恣意的な報告としてまとめられているような気がします。たとえば、自民党総裁選報道では、厳しい意見が圧倒的に多かったのに、好評意見に多くのスペースを割いていました。視聴者の声の報告はもっと分かりやすく、プラス評価のみならず、批判的な評価も謙虚に受け止めて、内容を明らかにしてください。また、番組や経営を検証する独自の定期的な番組を新設してください。

【会場参加者】
 方針2の中で「報道、ジャーナリズムを強化します」という表現がありますが、「ジャーナリズムに立ち戻ります」という表現をすべきではないのかと強く思いました。たとえば、ガザのニュースでは、「“ハマスの攻撃を受けた”イスラエル軍は」という枕詞をつけていましたが、イスラエル問題やパレスチナ問題に詳しくない一般の人たちに「ああ、過激派が攻撃するからだ」という考えを植えつけてしまうという問題があると思います。また、与党への応援が過多で、ジャーナリズムのあり方から逸脱しているのではないかと思うところがあります。私は湘南に住んでおり、横須賀に入港した空母「ジョージ・ワシントン」のことを非常に懸念しておりますが、NHKの番組で「ジョージ・ワシントン」のことを取り上げた番組を見たことがありません。市民の立場に立った本当に役に立つ情報を提供してほしいと思います。

(今井理事)
 内閣支持率については、全国3,000人規模の世論調査のデータをそのまま放送で使っていますので、決して世論操作をするというような意図はありません。
 ニュース項目の順番についてもご意見をいただきましたが、ニュースが非常に多い日もあれば、あまりニュースがないという日もありますので、ニュースの順番は、その日その日によって違ってきます。また、難しい内容をいかに視聴者の皆さまに分かりやすくお伝えするかという視点も必要かと思います。NHKのさまざまなニュース番組には、それぞれ編集の責任者がいて、各部署で相談をしながら放送の順番を決めたり、放送時間の枠を決めたりしています。特に、政治の問題や対立する意見のある問題、先程イスラエルとハマスのご意見もありましたが、対立構造にある国際的な問題などについては、さまざまな方面からの情報を盛り込んで、多角的に伝えることを基本にしています。不偏不党・公正中立、そして独自の編集権については、絶対に守っていかなければならないものと考えています。
 大リーグについては、10年ほど放送してきて人気が定着してきました。主にBS1を中心に放送していますが、固定のファンが非常に多く、視聴率もそれなりの数字が出ています。民放とバランスをとりながら放送を続けていきたいと考えています。

(小丸委員長)
 経営委員は、個別番組の内容については立ち入ることはできませんが、正確で公平・公正な報道、放送の自主自律・不偏不党という基本的な考え方は同じです。福地会長は、民間企業からNHKの会長に就任され、すばらしいスピードでNHK改革に取り組んでおられます。経営委員会としましても、会長と協力しNHKの改革に取り組んでいるところであり、ぜひともこれからのNHKを見ていただきたいと思います。

(大西理事)
 視聴者対応報告についてご説明します。NHKには年間660万を超える方からの電話や問い合わせがあります。私どもは、視聴者の皆さまからいただいた声は、経営の資源だと考えており、業務の改善に結び付けるため1か月ごとにまとめて報告しています。毎日寄せられる声についても、お問い合わせがあった番組や改善すべきことは、それぞれの部署に速やかに伝えるようにしています。

【会場参加者】
 私はNHKの定年退職者で、在職中はディレクターでした。
 昨年6月の経営委員会で、小林委員がETV改編問題の最高裁判決を受けて、「編集権は放送現場に帰属するものではなく、放送事業者、すなわち法人たるNHKに帰属している。放送現場が独走して、法律や倫理に違反した番組を作らないようにしっかりした体制で番組を作っていただきたい」という意見を述べ、会長が「おっしゃるとおりです」と答えています。放送番組の対外的な責任を最終的に会長が取ることは当然として、小林委員が発言なさった「会長の編集権をNHK内部に向けて行使して、もっと番組制作現場を厳しく管理しろ」というような発言は、放送の制作現場を威嚇・萎縮(いしゅく)させ、非常に弊害が大きいのではないかと思います。ディレクターは、番組の企画提案の段階から一人一人職能的な自覚のもとに自主的に行動し、日常的に会長や幹部からの上意下達の命令を受けて動いてはいません。現場での制作の自由があってこそ現場が生き生きと動き、多様で深い専門性に裏付けられた番組が生み出されます。しかし、現場と幹部の食い違いのようなものが起こることはあります。そのため私は、NHKの内部に制作現場と編集幹部が対等に話し合える編集協議会のようなシステムを作るべきではないかと思います。またそこで話し合われた内容はきちんと視聴者に説明するべきだと思います。

【会場参加者】
 BBCのような、公共放送でしかやれない、たとえば制作期間に5年とか10年ぐらいかかるようなすばらしい番組をぜひ腰を据えて制作していただきたい。民放では、費用対効果の関係や視聴率の問題も考えるでしょうが、NHKは、公共放送ならではの世界に誇れるような番組を制作していただきたいと思います。

【会場参加者】
 世界的な不況の中で事業に係わる経費節減が問われていると思います。そこで、一視聴者として日頃楽しんでいる番組について、素朴な提案をします。私は、『生活ほっとモーニング』『ゆうどきネットワーク』を毎日見ています。取材先で出演者の方が食べ物を食べ、アナウンサーの方がスタジオでもう一度それを食べるという演出をよく見ますが、これをやめれば食料費の節減ができるのではないでしょうか。また、全国各地を訪れる番組では、タレントの起用が多すぎるように思われます。現地の方々に出演をお願いすれば人件費の節減になり、よりよい番組に仕上がると思います。また、東京のスタジオに現地局のアナウンサーが来ないで、現地局との中継で放送ができないでしょうか。こうした一つひとつの小さなことが経費節減につながると思います。

(小林経営委員)
 編集権というのは非常に重要な権利です。この編集権が放送現場にあるという考え方を持たれている方もいると思いますが、現場ではなくて放送事業体、つまりNHKという法人に編集権があるという意見もあります。多数の意見は後者であり、先のETV2001の最高裁判決でも、編集権は法人としてのNHKにあると宣言した、というのが一般的な法律学者の解釈だと思います。NHKの内部の権限については、執行権は会長にあって会長の権限を下部組織に委譲するという関係になっていますので、編集権の執行権限は会長にあるとするのがおそらく普通の解釈だと思います。
 そして、経営委員会は、経営委員が会長をはじめ執行部に対して監督し注意を促す場ですので、私は判決を受けて、「権限がある時には必ず責任がありますから、勝訴したということで喜んでばかりいないで、そういう権限がある会長はしっかりやってください」ということを申し上げたわけです。

(福地会長)
 まさにNHKの編集権は私にあると思っています。ただご承知のように、NHKが保有する8つの波のすべてについて会長が編集権を行使するのは現実的ではありませんので、実際は放送総局長に委譲しています。しかし、NHKにとって非常に大切な不偏不党・公正中立を貫くということが現場で実行されているかどうか、私は常に検証する必要があると思っています。そこで私は、世論調査の現場に行って、どういう方法で世論調査を行っているのかを検証してきました。また、ある時は、NHKスペシャルの制作現場の企画会議に参加しました。解説委員室に行き、解説委員がテーマの選定をどう行っているのかを検証したこともあります。
 また、NHKには中央番組審議会と地方の番組審議会があります。私は中央番組審議会に毎回出席していますが、この会のメンバーはジャーナリストの方が非常に多く、ご意見をしっかり伺うようにしております。
 NHKは民放と違う番組を放送してほしいというご意見がありましたが、まさにご指摘のとおり、NHKでしかできない、NHKだからできる、そういう番組や報道をするように心がけています。

【会場参加者】
 NHKをはじめ民放、新聞は最近目線が下がってきていると思います。つまり、視聴率を稼ぐために、弱気に堕するというか、どうもそういうところがあるような気がします。今、格差の問題や派遣切りの問題があります。そういう問題一つとっても、かわいそうだということだけではなく、社会的セーフティネットをどういう形で作るべきかとか、そうした論点をもっと取り上げていただきたいと思います。

【会場参加者】
 次期経営計画の方針5の「日本、アジアを世界に伝えます」について、感想と質問があります。2月から英語の24時間放送が始まったことは、大変喜ばしいことですが、日本を世界にフェアに理解してもらうためにする放送は、もっと早く行ってほしかったと思います。私はつい最近まで南米にいたのですが、確かにBS1とかBS2は見ることができますが、見ている方は在留邦人や大使館の方など一部の人に限られていました。日本および日本人に対する潜在的なファンの外国人は大変多いので、公共放送であるNHKには、日本をフェアに理解してもらえるような役割を大いに果たしていただきたいと思います。
 2月から24時間英語放送が始まりましたが、いわゆる国連の公用語である6つの言語についてはいつ頃から始められるのでしょうか。

【会場参加者】
 私はあまりテレビを見ないのですが、端的に申し上げまして、NHKは民放のまねはしないでいただきたい。ラジオはよく聞いていますが、最近面白くないです。プロのアナウンサーはいいのですが、民間の方を採用する場合は、厳選していただきたいと思います。それからもう一つ重要なことですが、標準語を使っていただきたいです。そしてきれいな声の方を選んでいただきたいと思います。

(今井理事)
 目線が低いのではないかというお話がありました。今、日本も世界もさまざまな課題を抱えていますが、そうした課題は一面から見るのでは駄目だろうと思います。今の経済危機や金融問題は雇用にも関わりますし、私たちの生活に直結する問題でもあります。環境問題についても、エネルギー、経済、安全保障、外交など、さまざまな面が関わってくる課題です。こうした課題については、ニュース・番組ともいろいろな角度から情報を集めて、それを視聴者の皆さまに提供することが必要だろうと思っています。
 日本・地球規模の課題を徹底取材する「あすの日本」プロジェクトでは、これまでの取材の枠を越えて機動性を持った取材体制をとっています。また、NHKにしかできない番組という意味では、「プロジェクトJAPAN」というプロジェクトの一環として『坂の上の雲』というドラマを何年もかけて制作しています。
 英語による24時間放送は、外国人向けのテレビ国際放送として始めたものです。英語以外の言語で放送を開始するのは、体制的にも非常に難しい面があり直ちに始める予定はありませんが、ラジオの国際放送では、21年度は1日18言語で合計55時間10分の放送を計画しています。英語のテレビ放送について国内でも見られないかという声もありますので、インターネットを通じてご覧いただくという手法をとっております。

【会場参加者】
 私は視覚障害を持っています。ぜひテレビに音声を加えていただきたいと思います。報道番組を見ているとこのごろ外国の方がお話しになることが多いのですが、なかなか解説がついてこない。文字放送と同時に音声を報道番組につけていただきたいと思います。
 2011年から地デジになりますが、視覚障害の人たち向けのリモコンは1社ぐらいからしか発売されていません。すべての人たちが使えるようなリモコンの開発をしていただきたいと思います。
 最後に私は、『ラジオ深夜便』のファンなのですが、前日に「こころの時代」のゲスト名は紹介されますが、聞き手が誰なのかわかりません。どなたが聞き手なのかお尋ねしたところ、聞き手の資料は後日でないとわからないということでした。そうした情報をぜひ提供していただきたいと思います。

【会場参加者】
 最近は、放送にNHKらしさが少し失われてきていると思います。アナウンサーの方もしゃべり方が早口すぎます。もう少しゆっくりしゃべっていただきたいと思います。また、インタビューの際には、タレントさんに媚(こ)びへつらって盛り上げようとして、はしゃいでいるような感じがします。NHKらしく落ち着いた雰囲気で番組を作っていただきたいと思います。
 また、NHKではいろいろな不祥事が起きていますが、特に会計的な面は厳しく管理していただきたい。私は、かつて金融機関に勤めていました。NHKが不祥事を起こすとそんな会計の仕方をしていたのかと驚いたことがあります。いい番組を作るためだからといって大ざっぱに絶対ならないようにしてください。

(今井理事)
 NHKでは、ステレオ放送の際にはサブチャンネルで解説放送をしていることがあります。総合テレビですと21年度には、週10時間18分放送します。テレビ5波全体では、週にデジタルでは38時間36分、アナログで32時間15分、字幕放送についても週239時間58分放送します。徐々にではありますが放送時間を増やしていきたいと考えています。

(井原経営委員)
 「NHKらしい、NHKならではの番組を」というご意見をいろいろな観点からちょうだいしましたが、私も、特にニュース番組は事実を事実として深く鋭く、かつ多面的に作っていただきたいと思っています。
 視聴者の声の取り上げ方についてのご意見がありましたが、つい先ごろの経営委員会で、ぜひちょうだいしたお声をきちんと体系的に整理して番組作りに生かしてほしいと執行部にお願いしたばかりです。私は、公共放送には、まさにその「共」の字にあるように、「視聴者の方々と共に」という姿勢が求められていると思っています。
 会計のお話がありましたが、私は会計を専門にしております。NHKの会計の基本的な方針は、放送法施行規則に定められているところは定めのままに行っています。それ以外のところは、一般に認められた会計基準である企業会計原則により、かなり企業会計的な処理になっています。監査委員としては、その方向に進むように努力をしていきたいと思っています。

 

 

第2のテーマ:NHKの経営など全般について

 

【会場参加者】
 実は2月1日付で受信料の件で小丸委員長と各委員宛に書面を差し上げました。この同じ文面を小丸委員長の自宅、それから委員長職務代行者の岩崎様、小林委員の事務所のほうにも配達記録で差し上げております。一部を読みます。「私は平成16年のNHKの不祥事に対し、個人として抗議する術がほとんどなく、やむを得ず受信料の口座振替による引き落としを16年末に訪問集金の方法に変更しました。その時点では、12年5月まで分の受信料は口座振替で引き落とし済みです。しかるに12年5月以降、現在までの3年以上にわたり、集金のために来訪したのは5回、うち3回は私どもの留守中のことで、訪問したことのメモもなく、集金に来たことを確認したのはたった2回のみです。私は請求書のみが郵送されて、集金に来なかった期間の月50円の値引きと、これまでの経緯を書面にて解答するよう要求しておりますが、全く受け付けられずに無視され続けております。経営委員長および各委員におかれましては、これを真摯(しんし)に受け止めていただきたい。」

【会場参加者】
 私は親の代から受信料の支払を拒否したり、未納になったりということは過去一回もありません。NHKは経営目標として受信料の支払率を非常に重要視していますし、経営方針の8でも公平に負担していただくための取り組みを強化すると表明していますが、私は、30%もの人が支払わないのは大変不公平だと思います。そこで、3年後に75%、5年後に78%の目標をもっと前倒して、3年後80%、5年後90%ぐらいにして、それに向かっての経営努力を徹底してやっていただきたいと思います。

【会場参加者】
 私は転勤族でしたが、転勤先で長い間受信料の集金に来なかったのに、ある時いきなりやって来て、「何年分か払ってくれ」と言われました。いきなりなので首を傾げると、集金人の方は「じゃあ半年分にしておきますから払ってください」と言いました。NHKでは、集金人との契約をどうされているのか不思議に思いました。どのようになっているのでしょうか。

【会場参加者】
 経営計画で受信料についていろいろと目標を立てていますが、具体的にどういうことをやるのかを伺いたいと思います。今も集金の話がありましたが、集金は確か今年から止められるというような話を聞いています。私も団地で共同アンテナが入っているから払わなければいけないと思い、40年ぐらい振込みでずっと支払っていますが、不公平感が非常に強いです。具体的にどうやって支払率を上げるのかをお聞きしたいと思います。

(大西理事)
 集金に来ないのにいきなり請求書が来たので、文書を送られたという方については、すでに文書などで回答させていただいております。個別にお話をさせていただいてご理解を求めたいと思います。
 また、支払率3年後75%、5年後78%では目標が低いではないかというご指摘や、支払率を上げるために具体的に何をするのかというご質問がありました。年間300万世帯に及ぶ転居などがあったり、オートロックのマンションが増えたりしてお一人お一人にお会いすることが大変困難な社会状況にありますが、1軒ずつ粘り強くお訪ねをして支払率を上げていきたいと考えています。また、16年にあった不祥事によって契約はしているが支払いが滞っているという方々には、今回の経営計画やこれから目指すNHKの姿について訪問や電話などで丁寧にご説明させていただき、ご理解を求めていきたいと思っています。そして、昨年の10月からは訪問集金を廃止し、そのパワーをまだ受信契約のお届けがいただけていない方への訪問や支払いが滞っている方への説明強化にシフトしていくことで、支払率を上げていく取り組みを現在進めています。

【会場参加者】
 方針7で、構造改革を進めて取材・制作の現場に経営資源をシフトしますと書いてありますが、本当に制作現場に資源がいっているのでしょうか。たとえば、最近再放送がすごく多いと思いますし、総合テレビで放送した番組を衛星放送で放送して、またハイビジョンで放送してということがかなり多いと思います。放送番組を作る方向にお金を使っていなくて、その結果、NHKの番組自体が先細っているのではないかと思います。

【会場参加者】
 私の子どもも孫も、赤ちゃんの時からNHKで育ってきました。硬すぎず軟らかすぎず、NHKらしい信頼できる番組をいっぱい作ってくださるからです。
 放送は教育に対する力が非常にあると思います。楽しい番組もいいですが、放送大学のような感じの小学生・中学生、幼児向けの番組も多くあります。孫たちが海外から帰ってきて非常に日本の教育の中で苦労しております。NHKが頼りですので、私の一番の要望は、教育に受信料を使ってもらいたいということです。

【会場参加者】
 私は定年後あまりテレビを見なくなり、ラジオを聴く機会が増えています。 『ラジオあさいちばん』の「ニュースアップ」というコーナーには、最近は解説委員の方が多く出るようになりましたが、「時の話題」というコーナーでは、  NHKを退職した職員で現在は大学教授、ジャーナリスト、国際問題研究家などという肩書きのついた方が出演されていて、退職した人の指定席になっています。『ラジオ深夜便』については14人のアンカーのうち10人は退職した人たちです。NHKにはそれぞれの部門の解説委員や記者がいるのですから、何もNHKを辞めた人を起用する必要はないのではないでしょうか。

【会場参加者】
 方針2に、「報道ジャーナリズムを強化します」とありますのに、経営トップの経営委員長や会長は財界から来ていて、非常に違和感があります。現在の日本の置かれている状況は、経営者がいろいろ判断する状態ではなく、やはりジャーナリズムに造詣の深い方が委員長や会長になるべきだと思います。
 また、ニュースでは国内の動きをきちんと伝えてほしいと思います。たとえば午後7時のニュース、午後9時のニュースで、世界の動きももちろんですが、その日の日本の動き、国内で起きている問題についてわかりやすく伝えていただきたい。特に国会の動きについては、国会の中で論議されたことがほとんど伝わってきませんので、きちんと取り上げてほしいと思います。

【会場参加者】
 経営委員会の議事録は、ひところに比べると大変改善されてきていますが、委員会の中で委員同士がどのような議論をされたのか、どういうプロセスで議論が行わたのかが見えてこないのが大変不満です。経営委員になる前に誰それが経営委員長に内定したというような記事が出て、事実そうなるというようなことがありますが、経営委員会も開催されていないのに内定するというようなことは政治の介入であり、とんでもないことです。そして、そのようなことは問題だという経営委員の経営委員会での発言や、経営委員長を選出する経営委員会の模様が議事録として公開されていません。取捨選択して発表するのでは議事録公開の意味がないので、国会の議事録のように編集せずに完全な議事録を出してほしいと思います。

(岩崎委員長職務代行者)
 経営委員は、衆参両議院の同意を得て総理大臣が任命することになっています。そしてそこで選ばれた人が経営委員になって、その中の互選で経営委員長を決めることになっています。新聞などがどのように報道しようとも、その時点では何も決まっておらず、あくまでも経営委員の互選でしっかりやっています。また議事録は、ほとんどは公開しています。人事に関わることや公開することによって経営に支障をきたすことについては、一部省略させていただいているものがありますが、それもなるべく少なくしようとしています。

(小林経営委員)
 私もいろいろな会に出ますが、それらと比較しても、経営委員会の議事録は非常に透明度が高いと思います。重要な事項は全部記載されていますし、発言者が記載してほしいと言えば、必ず記載することになっています。すべて速記録のように公開したらどうかというご提案がありましたが、よい面もあるとは思いますが、形式的な議論に終わってしまう可能性もあるし、そういう形で載るのなら発言を控えようという傾向も出ないとは限りません。私は、視聴者の皆さまにお知らせする必要がある重要なポイントは必ず記載する。またそれに付随して支障がないものはすべて記載する。そういう方向が正しい方向だと思いますし、今そのような方向に進んでいると思っています。

(金田専務理事)
 再放送が多いのではないかというご意見と現場に資源が配分されていないのではないかというご意見がありました。
 実際、ある時期には受信料収入が一気に500億円近く減り、経費を圧縮したため、現場にリソースが十分にいかず、期末などに総集編として再放送が増えたことがありましたが、私としてはもう克服したと思っています。
 現場への資源の配置については、本年は、地上放送に5%増の予算をつけていますし、来年度の予算についても4.4%増としました。ご意見のあった教育テレビについても、今年50周年ということもあり、7.6%増の予算をつけています。このように、予算全体では管理部門のところは圧縮して、現場に予算をつけるようにしています。そのことが実際に画面に見えるようになるまで、少しお待ちいただければと思っています。
 それから、「NHKは硬い」「NHKらしさが失われ、少し民間的になっているんじゃないか」というご批判もありましたが、NHKをよく見てくださる方々は、かなり高齢化してきています。そこで、若い人たちに見ていただけるような番組を開発する努力をしています。その中の一部には、ちょっとNHK的でないというようなご批判を受けるものもあると思いますが、これは試行錯誤の中で、次の世代にしっかりNHKのファンになって公共放送を担っていただくための努力とご理解いただければと思います。

(今井理事)
 ラジオについて、OBの指定席になっているのではないかというご指摘がありました。ラジオは非常に重要なメディアであり、特に地震など災害の時には非常に有効な放送手段ですので、これからも大事にしていきたいと考えています。ただ、『ラジオ深夜便』などは、毎日、土日も含めて徹夜での放送になりますので、どうしてもパワーが不足してきます。そこで、経験豊かな先輩に助けてもらっています。できることならば現役の職員だけで行いたいとは思いますが、どうしても不足する部分について、補ってもらっているという実情があることもぜひご理解をいただきたいと思います。

【会場参加者】
 1つ、議事録公開について、経営委員のみの会議の議事録が公開されていません。たとえば、一昨年の3か年計画を議決しなかったときのあの文書を作った会議の内容は、まったく公開されていません。経営委員のみの会合の議事録もきちとんと公開してください。
 2点目、小丸さんを経営委員長に選んだ時の経過の中で、選考基準の1つとしてNHKと特別な利害関係がないことという選考条件がありました。私が入手した資料によれば、訪問集金、口座振替届の取次ぎなどの委託業務試行を小丸委員長が代表取締役をお務めの福山通運が受託しています。試行とはいえ、こうしたNHKの業務を経営委員長が社長をお務めの会社が受託することは、先に挙げましたNHKとの特別な利害関係に当たらないのでしょうか。
 3つ目、小林英明委員にお尋ねします。昨年6月24日の経営委員会で、小林委員はETV2001の番組改編事件に関する最高裁判決を受けて、「NHKが放送する番組については放送現場が独走して法律や倫理に違反した番組を作らないよう、法人としてのNHKがしっかりした体制を持つべきだというのがこの最高裁判決の主旨だと思うのでよろしく」と福地会長に要望されています。この判決のどこにそのような主旨を読み取れる箇所があるのか、小林委員にお教えいただきたいと思います。また、東京高裁はこのETV番組改編事件に対する判決の中で、番組の放送日の前日に当時の官房副長官安倍晋三氏と面会したNHKの当時の国会担当局長が、自らこの番組の制作現場に出向いて「これでは全然ダメだ」と発言して、どこそこをカットしろと制作スタッフに迫った事実が認定されており、最高裁も控訴審判決の中でこの事実を覆してはいません。このように番組制作に関わらない国会担当局長が制作現場に足を運んで、政治家の意向を忖度(そんたく)し、番組のどこそこをカットせよと威圧的に指示することこそが、編集の自主自律を放棄した独走ならぬ暴走だったと私は思いますが、小林委員のご認識をお聞かせいただきたいと思います。

【会場参加者】
 完全地上デジタル化は2011年7月より実施予定ですが、日本の今の経済状態や社会状態をかんがみますと、一気にデジタル化するのではなく、アナログと3年から5年ぐらい並存していくというようなことはできませんでしょうか。なぜ2011年と決めたからワッとやらなければならないのか、疑問に思います。

【会場参加者】
 1つは、私は大事なことはNHKが本当に良質の番組を作っているかどうかであり、これに対して全ての勢力を注ぐことだと思います。かつていろいろ不祥事はありましたが、当時の副会長がテレビで「良質な番組を作るNHKでありたい」とおっしゃっていました。まったくその通りだと思います。予算は良質な番組を作るために充当して、しっかりと受信料も徴収するようよろしくお願いします。特に私は『ラジオ深夜便』を聴いていますが、アンカーの人は立派な人格者です。NHKには良質な番組がたくさんありますので、これからもよろしくお願いします。
 もう1点、先ほど説明があった事業計画については、国会の委員会で承認をもらいましたが、あれを読みますと附帯事項が20ぐらい付いています。だいたい国会議員がNHKのラジオやテレビを聴いているのか、見ているのかと思います。ああいう先生方が附帯事項を20項目も付けるのはおかしいのではないかと私は思います。

(福地会長)
 NHKの番組について、さまざまなご意見をいただきました。私は会長に昨年の1月25日に就任しましたが、就任の日に職員全員に宣言したのは、「どんなことがあっても、正確で迅速な報道と良質な番組を作るためのコストカットはしない」ということです。したがって今回の3か年計画では、大幅に増やすことこそできませんでしたが、予算を減らさないようにしています。要員についても、この3年間で1,200人を削減してきていますが、報道・制作現場や地域の放送局については増やす計画にしています。

(小林経営委員)
 ご質問がありましたETV2001の最高裁判決についてです。私は、最高裁判決は、「編集権は法人たるNHKにある」、またNHKの内部の権限分掌の関係から、「執行権は会長にある」、したがって「編集権は会長にある」、こうした解釈を最高裁がしたと理解しました。編集権が会長にある以上、番組を作った最終責任は会長にあると私は理解しています。最終責任が会長にある以上、もしその番組内容が法律に違反していた場合、最終的に責任は会長にある、こういう論理的な構造を持つ最高裁判決だと私は理解しました。そして、経営委員会は、私たち経営委員が会長に注意を促す場ですから、そういう最終責任を負うべき会長に対して、法律や倫理に違反した番組を作らないようにしっかりした体制できちんとした番組を作っていただきたいと、こういう注意をしたわけです。

【会場参加者】
 法律に違反した番組とはどういうものでしょうか。

(小林経営委員)
 たとえば、数日前に、週刊新潮が大相撲の貴乃花の名誉棄損の記事を掲載したということで、新潮社の社長に対して損害賠償命令が出ました。新潮社の社長は週刊新潮の編集にはまったく関与していませんが、判決は社長に管理責任があると判断して、賠償命令を出しました。同様に、番組制作の最終責任は会長にあるのだから、たとえば名誉棄損などの法律に違反した番組を作らないようなチェック体制を作る責任があるということを会長に申し上げました。
 もう1つ、高裁の判決のお話がありましたが、日本は三審制をとっています。高裁判決もそれなりに重みを持つとは思いますが、最高裁判決で破棄されて、最高裁が先ほど言ったような判決を出しているので、私は最高裁判決に基づいてそういう意見を申し上げました。

(金田専務理事)
 デジタル化を性急に進める必要があるのか、というご意見についてです。アナログは、電波多消費型の方式であることから、新たな技術革新に基づき日本だけでなく世界でデジタル放送への移行が行われています。昨年11月25日にドイツではアナログ放送が終わりました。また1月15日にはハワイでも終了しました。アメリカも2月17日に終わる予定でしたが、6月12日まで延びました。このように、世界各国で行っていることですから、私たちも2011年7月までに何とか行いたいと考えています。アナログとデジタルを並存させて放送すると、その経費が60億円から70億円も余分にかかるということもあります。2011年7月に向けて私たちは最大限の努力を図りたいと考えていますので、ご理解いただきたいと思います。

(井原経営委員)
 経営委員のみの会での議事録公開についてご意見をいただきましたが、経営委員のみの会についてはいわゆる一問一答型の議事録はありません。ただ、私が知る限り、経営委員のみの会で議論されたことが、本来の委員会でほとんど出ないことはないと思います。つまり経営委員のみで議論されたことも、議事録の中に載るシステムになっていますので、経営委員だけで議論したことがまったく公開されないという形にはなっていません。ただご指摘のような方向で努力をせよというご意見については、謹んで承りたいと思います。

(小丸経営委員長)
 先ほど業務委託の件についてご質問をいただきました。私どもは、北海道から沖縄まで全国津々浦々で配送業務行っていますが、その当時、郵政の民営化により、NHKが訪問できない地域において受信料の訪問集金などをしていただけないだろうか、というお話がNHKからありました。同様のお話が全国の同業他社にもあったと聞いていますが、その詳しい過程については大西理事から説明をお願いします。

(大西理事)
 昨年の10月に訪問集金を廃止すると同時に、山間部や島しょ部における集金業務など、これまで郵便局にお願いしていた「郵政委託」がなくなりました。そのため、山間部にお住まいの方で振込みができなかったり、一部集金が残るところについては、業者の方に代行して訪問していただくことができないかと考え、その試行を始めました。現地にネットワークを持つさまざまな運送業者にも声をかけさせていただきましたが、現在のところは、福山通運さんとのみ合意が成立しているところです。


(小丸委員長の全体についてのまとめ)

   本日は、番組の正確性、公平・公正に関わること、受信料に関わること、経営委員会の透明性についてなど、さまざまな示唆に富み、貴重なご意見を伺うことができました。中には厳しいご意見もありましたが、NHKと私ども経営委員会に対する叱咤(しった)激励と、真摯に受け止めさせていただきます。
 次期経営計画を執行部が着実に実施していくようしっかりと監督していくことが、私ども経営委員会の当面の最大の課題だと考えておりますので、執行部と適度な緊張感を保ちながら、お互いの権限を尊重し、計画の達成に向けて努力してまいります。
 そして、正確で公平・公正な報道に努め、放送の自主・自律を堅持し、不偏不党を貫いていかねばならないと考えています。特に、意見が対立しているような問題については、論点を多角的に報道して、視聴者の皆さまにより多くの判断材料を提供すること、これが視聴者の皆さまから信頼していただくために大切なことだと考えています。
 そのためにも、この「語る会」をより充実させ、来年度は今年度よりも2回多い全国8か所での開催を予定しています。経営委員が全国各地で視聴者の皆さまから直接ご意見をちょうだいし、今後の経営委員会の議論に生かしていきたいと思います。これからも視聴者の皆さまから今まで以上に親しまれる、信頼されるNHKであり続けるよう、私ども経営委員は最善を尽くす所存ですので、何とぞご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

<当日会場アンケート集計結果>

質問1:性別

男 性 女 性 不 明
30 10 5

質問2:年齢

10代 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上
0 1 4 4 6 11 19

質問3:今回のイベントに参加していかがでしたか

①たいへん満足 ②満足 ③ふつう ④不満 ⑤たいへん不満
6 13 7 14 4

質問4:一番印象に残ったコーナーはどこでしたか

①次期経営計画
21年度事業計画
②放送について ③経営など全般について ④「天地人」制作秘話
5 11 20 4

質問5:イベント全体を通した運営で、改善してほしいところは

①受付 ②会場 ③参加者の
人数が多い
④参加者の
人数が少ない
⑤その他
1 2 6 3 24

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

①大変よく知っていた ②よく知っていた ③知らなかった ④その他
3 21 16 4

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

①理解が深まった ②特に変わらない ③わからない ④その他
20 17 3 1

 

 

<当日会場アンケートに記された主なご意見(要約)>

放送

  • NHKの番組の質を落とさないでほしいという意見が多いのが印象的だった。
  • NHKには民放との違いを強くしてほしい。例、タレント化しているアナウンサー。
  • 犯罪の手口を事細かに繰り返し報道しないでほしい。
  • 編集権が会長にあることを前提としても、地位の高い者に権力が偏るのは問題である。
  • 目線を高く、志を高く持って、国民・政治家官僚のレベルを上げてほしい。
  • 民放は民放!視聴率を気にしないNHKとしての独自の道を歩んで欲しい。
  • 次回も参加したい。NHKは公共放送として不偏不党、良質番組をいつまでも目指してもらいたい。福地会長の方針を聞いて納得した。
  • 会場参加者の発言に大変感銘をうけた。それらの意見は、日本が真の民主主義国家となっていくためにいかにNHKに期待しているかの証明だと思う。
  • 3年後80%の接触率を求めるには視聴者側に若い人を育てることが大切だと思う。
    ゴールデンタイムにもっと若い人向けの質の高い番組を望む。

 

経営全般

  • NHK改革の意欲が伝わってきた。
  • 立派な経営計画が掲げられているが、実現できることを期待している。
  • 受信料不払いの原因究明が足りない。
  • 経営委員会はNHKの最高意思決定機関とされるが、執行部との関係は上下の関係であることは決して望ましいことではなく、互いに協力しあい、適当な緊張関係にあることが望ましい。

 

運営

  • 時間が短かったように思う。大勢の意見を聞いてもらいたい。
  • よく運営されていたが時間が不足した。
  • 事前に質問を回収するなどして効率よく進行してもらいたい。
  • 質問に対し十分な説明がなかったようなので検討を願いたい。
  • 時間にもう少しゆとりがほしい。発言できなかった。
  • 特定の人の質問時間が長い。
  • 発言者は時間を厳守するようにして、一人でも多く発言させてほしい。
  • 建設的な意見でなく個人の不満のはけ口が一部に見られ、残念だった。
  • もう少しリラックスした場にして欲しい。
  • まとまりがなくがっかりした。60名で2時間の意見交換は難しいと思う。
  • 登壇者にも、歯に衣着せぬ真実発言をお願いしたかった。
  • 思想信条政治色の強い参加者がまぎれているように感じた。
  • 参加者の意見が長く質問になっていなかった。
  • 係員が多すぎると感じた。
  • NHK側も参加者もテーマに分かれ、サークル形にでも座り同じ目線で懇談できればよかったと思う。
  • テーマ別に会を企画すべきだと思う。
  • 問題が多岐でまとまりに欠ける。全体的に焦点がぼやけてしまった。
  • 事前アンケートは不要と思う。
  • 事前アンケートを中心に質疑応答を進めていただきたかった。
  • 参加者が事前アンケートに書いたことを資料として提供してほしいと思う。
    また、回答できる質問には回答を用意してほしい。過去の語る会で話題になったことの記録も提供していただけると議論も先に進めるのではないかと思う。
  • 事前に質問用紙を配るなどして意見をまとめやすくしてあげると年配者も話しやすくなると思う。
  • マイクを1人占めしたり、自分の主張ばかり長時間発表される方がいてうんざりした。NHKに抗議的な姿勢で発言される方もあり不快だった。ただ、執行部側と経営委員と同席で話を伺えたのはよかった。
  • 「ふれあいミーティング」のようなものの回数を増やしてやったほうが良いと思う。
  • 地下鉄を降りてから会場探しに苦労した。